自分と向き合う大変さ/藤堂顕一郎音楽褒章を受賞した日野俊介へのインタビュー
先日、特別契約Vc首席日野俊介が第38回藤堂顕一郎音楽褒章*を
受賞しました。おめでとうございます。
*藤堂製作所創業者である故藤堂顕一郎氏が私財を投じ、京都府下における音楽文化の向上と、その振興に貢献された個人及び団体に褒章金を授与し、その音楽活動を表彰すると共に、音楽文化発展の一助となることを願って1981年に設立されました。それ以降、毎年数人の規模で、京都の音楽振興、国内の洋楽振興を目的に、将来有望な新進音楽家や音楽研究家、音楽教育者または団体に褒賞金を授与し、その活動をサポートされています。
-受賞おめでとうございます。
ありがとうございます。大学の先輩や知り合いが受賞されていて、
この褒賞のことを知ってはいましたが、
自分に縁があるとは思ってもいませんでした。
本当に寝耳に水で、何がどう評価されてこういう事になったのか
分からず自分自身が一番驚いています。
授賞式
表彰状
-チェロを始めたきっかけを教えてください。
ギターをずっと独学でやっていて、
中学卒業後にやっと習いに行った先の先生が
「ギターなんかやめてチェロにしなさい!」と言われてしまい、
結局それに屈して高校のクラブでチェロを始めることにしました。
最初はどうにもつまらなくて、何度も辞めようと。
でも、好きな女の子がヴァイオリンを弾いていたから続けていました。
楽しくなってきたのは、曲が弾けるようになってきた一年後ぐらいです。
-プロになろうと思ったきっかけを教えてください。
当時はギターを専攻できる学校もなく、それだったらチェロでと
音大にいったのでプロを目指すしかないなと。
周囲が上手な人ばかりで焦ったこともあり、
真面目に練習して卒業しましたよ。
当時はどんどん景気が良くなっていたころで、仕事はたくさんありました。
卒業後はすぐ神戸市室内管弦楽団に入団することができました。
仕事で失敗しながら、色んな事を覚えていった感じですね。
その次の大阪センチュリー響でもトップに座って演奏していました。
が、だんだん「自分の演奏を見直そう」と思うようになり、
退団してフリーランスになりました。
そこから依頼された仕事はクラシックに限らず何でも、
全て引き受けました。
そんな生活を10年以上続けていて、ある時、
関西フィルから声を掛けていただき、特別契約首席奏者になりました。
今考えると大変ラッキーなことが多かったと思います。
-どんなことを考えながら演奏されていますか。
楽器を弾くことは自分の中の問題で、それが身体を伝わって表れてくる
奥深いものです。そこを掘り下げて進歩しようとすることは、
自分自身とさしで向き合って、自分の人間としての欠落箇所を
より知るということで、これは実につらい作業です。
いずれ楽になると思ってやってきましたが、全然なりませんね。
あまりにしんどいのでもうやめてしまいたいという気持ちと、
それとは裏腹に音楽の世界にずっと浸って幸せを感じていたいという
両方の気持ちが入り交じっています。
指導もしていますが、一緒に勉強している気持でやっていますし、
そんな弾き方があったのかと目から鱗が落ちることもよくあります。
自分には見えていない部分が見えているんだなと。
-次の公演の出演は5月22日(水)「大阪市中央公会堂特別演奏会プレミアム」ですが、お客さまにメッセージをお願いいたします。
ホールとはまた違う響きと雰囲気を楽しんでいただけると思います。
チェロを始める前に父親が台湾で買ってきたクラシックの
レコードを聴いていました。レコードの文字が読めず、
クラシックとは分からず聴いていましたが、
これがきっかけで好きになりました。
クラシックに疎遠な方もきっかけがあれば、身近に感じることができます。
中央公会堂でお待ちしております。
大阪市中央公会堂特別演奏会プレミアム
・ 日時:5月22日(水)開場14:00 開演15:00
・指揮:オーギュスタン・デュメイ
・Fl: 椎名 朋美(関西フィル首席奏者)
・Cl: 梅本 貴子(関西フィル首席奏者)
・プログラム
●モーツァルト:フルート協奏曲第2番 ニ長調 K.314
●モーツァルト:クラリネット協奏曲 イ長調 K.622
●ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93