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「ソフィット」とは?「三次元のビリヤード」とは?/永田音響設計、小口恵司さんへのインタビュー

 2019年9月1日(日)にオープンする東大阪市文化創造館。
 東大阪市文化創造館開設準備室の畑中室長、
佐藤総合計画関西オフィスの竹馬聡さんに続いて、
音響に携わられた永田音響設計の小口恵司さんに
インタビューさせていただきました
キーワードは「ソフィット」と「三次元のビリヤード」です。

 小口さん「文化創造館の大ホールは、舞台と客席がなめらかに繋がるように
音響反射板と客席の形を整え、舞台上の音が客席でもよく響くように、
壁から突き出たサイドバルコニー席を設置しました。
こうすることで、音がバルコニー下の天井とその奥の壁で反射し、
客席に響くようになります。
 また、舞台上の奏者にも音がよく聴こえるようにするためには、
舞台にもサイドバルコニー席的な要素を組み込めれば良いのですが、
大ホールの反射板は可動式なのでそれは難しく、
代わりに反射板の厚みの中にサイドバルコニー席のような
音響庇(ひさし)の役割を果たす要素を組み込んで、
奏者にも反射音が豊富に届く工夫をしています。
その要素をソフィットと呼びます。」

【東大阪市版ソフィット】

小口さん「天井が高いと豊かな響きになりますが、
音の跳ね返りが遅くなり、奏者が演奏しにくくなってしまいます。
そこで、天井に当たった音よりも早く音が奏者に返るようにするために
『ソフィット』という、出っ張った部分を設置しました。
客席からステージ上の壁を見ると、格子に見える部分があります。
この格子の奥にソフィットが設けてあり、そこからの反射音が、
天井からの反射音より早く奏者に返り、より演奏しやすくなります。」

 

客席から見た東大阪市版ソフィットについて、説明してくださる小口さん

ステージ上(音響反響板の側面)から見たソフィット
格子の裏側は、壁の後ろに出っ張っています。

【三次元のビリヤード】

小口さん「音の響きの質」を決めるために、コンピューター上で
シミュレーションをしています。このシミュレーションのことを
『音の三次元のビリヤード』と呼んでいます。
 下の図は、黄色の丸から四方八方に1万個ほどの音の粒を飛ばし、
その音の粒が天井や壁にあたり、反射して床に落ちるまでを表しています。
赤色は1回、黄色は2回、緑色は3回反射して床に落ちたもので、
赤・黄・緑が適度に分布されないと、音が響きすぎたり、
響きが少なかったりします。
反射音が適度に分布されるように何度もシュミレーションし、
『音の響きの質』の検討を進めました。」

左がステージ、右が客席(大ホールを上から見たシミュレーション図)

 小口さん「音のシミュレーションの観測時間は、舞台から直接音が届いた後
わずか0.1秒です。この0.1秒より後に届いた反射音が続く時間を
残響時間と言います。どの客席でも残響時間はほとんど変わりませんが、
なぜ席によって演奏の印象が変わるのでしょうか。
それは耳に届く音が、『どの方向から届いたのか』、
『どのような反射を繰り返したのか』が違うからです。
つまり、赤・黄・緑の分布の違いによるということです。」


6月時点でのホールの進捗状況をご覧になった小口さんのご感想

「完成間近で様々な音響性能を確認している期間に、
インタビューいただく機会を得ました。特殊な信号を使って
音響性能を確認していて、演奏を聴いた訳ではありませんが、
濃密かつ繊細な響きになりそうでワクワクします。
こけら落とし公演のプログラムであるマーラーの交響曲第1番『巨人』は
好きな曲の一つなので、演奏を楽しみにしています。
小ホールも豊かな響きですので、お楽しみいただけたらと思います。」

 
 昨年から東大阪市文化創造館開設準備室の畑中室長、
佐藤総合計画関西オフィスの竹馬聡さんと
文化創造館に関わってこられた方に
インタビューさせていただきましたが、
お伺いした様々な工夫の完成形を想像すると興奮してきます
完成した姿を想像しながら、オープンを楽しみに待ちましょう
東大阪市文化創造館HP⇒https://higashiosaka.hall-info.jp/index.html

畑中室長インタビュー⇒https://kansaiphil.jp/information/9094/

竹馬さんインタビュー⇒https://kansaiphil.jp/information/9874/