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50周年記念コラム~未来の関西フィルへ K.0722

 皆さま、こんにちは!
 50周年記念コラム~未来の関西フィルへ K.0722
今回はヴィオラ奏者、田代直子からのメッセージをお届けします。
 

 関西フィルを応援してくださるみなさま、いつも本当にありがとうございます。2020年は東京オリンピックの年、関フィル50周年記念の年…。
「華やかな忘れえない年になる」と、お正月にわくわくと考えていたのはつい最近のようで、かなり前のようで…。

 音楽業界には2月半ばから影響が及び始めたコロナ禍によって、
お正月に思い描いたものとは程遠い形で記憶に残る2020年の日々が過ぎています。オリンピックは延期に、50周年記念はもちろん、他にも沢山の楽しみにしていたコンサートも延期・中止となり、演奏活動の出来ない寂しい時間が過ぎていきました。けれど、そんな時間が教えてくれた沢山の事もあります。

 家族といる時間が増えて、その有難味を感じたり、基礎練習やソロのレパートリーをさらう時間が増えて、久しぶりに自分の音とゆっくり向き合ったり…なかなか最近は出来ていなかった読書、庭の草引きなども楽しんでいました。草引きは、ちょうど活動自粛がスタートしたのが草木が栄え始める時期だったので、綺麗にしたと思って振り返ると、もう新たに生えている…というかんじで、自然界と根比べをしている気分になりますが、雑草の生命力は凄いな、と妙に感心してみたり…

 そんな中で、庭に沢山のブライダルベールの花が咲いているのを見付けました。母に聞くと、以前ダメになったと思って鉢を土ごと庭に捨てた辺りだとか…。雑草の生命力はともかく、あんな繊細な花が、一度枯れてもこうやって野生として蘇って、綺麗な花を咲かせて魅せてくれるんだな、と心に何かジンと来るものを感じました。

 けれど、アンサンブルが出来ない時間に得たものもある代わり、どれだけ自分が誰かと音を合わすことを好きなのかも痛感しました。内声を、キザミを、周りの音を聴きながら弾きたい気持ちは日々どんどん強くなり、自粛明けに初めてアンサンブルが出来た時、そして6月の定期演奏会で舞台に出てお客様のお顔が見れた時のゾクっとした感覚は、生涯忘れないと思いますし、忘れたくありません。

 音楽は美しい、綺麗、楽しい、癒される…そんな言葉で表現される事が多いですが、そんな形容と同時に、その音楽を演奏する私たちの強い意志でもっても、私が庭のブライダルベールを見て感じたように、応援してくださるみなさまに生命力あるエネルギーをお届け出来るようでありたいな、と思います。

 まだまだ不安な状況が続きますが、新しい環境とうまく共存しながら、
より多くの方々とコンサート会場で元気に笑顔でお会い出来る日を心待ちにしております。
今後とも関西フィルをよろしくお願いいたします。

ヴィオラ奏者 田代 直子