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50周年記念コラム~未来の関西フィルへ Op.0915

みなさま、こんにちは!
関西フィル50周年記念コラム、オーケストラの“お仕事シリーズ”として前回は(1)“バンダ”についてお話しました。
今回は「オーケストラの配置」です

 

― (2)配置の世界 ―

 

 オーケストラは、それ自体が大きな楽器(音響装置)として、今日の我々を楽しませてくれます。
今回は、そのオーケストラにおける「配置」の不思議について…

その前に、オーケストラの配置の読み方のご案内をします。それぞれのパートの“人数”を表記する決まりで、その順番も決まっています。

例えば、関西フィルの標準的な編成は、

12 10 8 7 6-3 2 2 24 3 3 1Tim3 

と表記することになります

 

左から順に、

(弦楽器)第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス (12 10 8 7 6
(木管楽器)フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット (3 2 2 2)
(金管楽器)ホルン、トランペット、トロンボーン、チューバ (4 3 3 1)
(打楽器)ティンパニ +ほかの打楽器(パーカッション)  (Tim3)

の各楽器に、( )カッコ内の演奏人数を割り当てたものです。

 

上の場合、第1ヴァイオリンは12名の場合、「12型」と呼びます。

弦の人数は演奏内容によって可変するので、第1ヴァイオリンが10名の場合「10型」といい、10 8 7 6 5 3 2 2 2…といった形になります。

 

そこで、配置のお話です

 

現在、世界中のオケで一般的に一番見られる配置が、下の図の「ストコフスキー・シフト」と呼ばれる“通常配置”となります

 

(1)【ストコフスキー・シフト】(通常配置)© Jun Yoshinari

1930年代に、演奏や録音、そしてホールの音響的な立場から、アメリカで活躍した指揮者レオポルド・ストコフスキー氏(1882-1977)により提唱された配置で、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを左右に分けず左側に固める方法です。ホール演奏では、全体の音がよりブレンドして聴こえ、ヴァイオリン奏者も演奏しやすい等の利点があります

 

もうひとつ、「古典配置」と呼ばれるものがあります

 

 

(2)【古典配置】(対向配置)

 © Jun Yoshinari

 

もともとは18世紀後半ごろに定まってきた配置で、
特徴は、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンが指揮者を挟んで舞台の左右で向かい合う形です。別名”対向配置”とも呼ばれます。
左右でヴァイオリンの掛け合いによるステレオ効果が分かりやすくなり、各パートの音が比較的クリアに聴こえます。
ただヴァイオリン同士の掛け合いが難しいなどの特徴がある配置です


現在、殆どのオーケストラの演奏会は、この(1)(2)、どちらかの形を基本とした配置の演奏会であるはずです。聴こえ方は、それぞれ違います。

(※チェロとヴィオラが入れ替わった配置になったり、ホルンが左側に行ったり…という、マイナーチェンジは多々ありますが、原則は左側前が第1ヴァイオリン、舞台前部から弦楽器→木管楽器→金管・打楽器という順の括りは変わりません)

 


上記の“配置”が18世紀後半に定まるまでの数百年以上、弦楽器と管楽器は基本的には分かれて演奏されることが多く、オーケストラ文化が発展・繁栄し「配置」を音響面・演奏面においてしっかり考えられたのが、ここ250年くらいのことです

 

 

【オーケストラの配置例】(通常版)

  (C)s.yamamoto                       (C)s.yamamoto

■20191016日 第305回定期演奏会 指揮:藤岡幸夫 

ハチャトゥリアン:交響曲第2番「鐘」より

(編成)14 12 10 8 7 3 2 2 2 4 3 3 1 Tim4 2HP Pf 
※コーラングレ1Es管クラリネット1、バスクラリネット1、ハープ2、ピアノ1

人数が多いですが、これは「ストコフスキー・シフト(通常配置)」を基本にしています。
 実はオーケストラ配置は、あくまで(1)(2)ともに、基本的な配置にすぎない、という言い方もできます。

肌感覚では、クラシック曲の9割方は基本配置に収まるのですが、
音響バランスや演奏者の事情、色々な判断で指揮者が配置を意図的に変えたり、作曲者が珍しい編成や配置を指定した場合、見たこともないような配置になることがあります。

それも、オーケストラを見る醍醐味のひとつでしょう 

 


そこで今回は、珍しい配置の演奏会、関西フィルの過去の演奏から数公演を、ご紹介します。

 

 

【珍しい配置】(1)

20041126日 第169回定期演奏会 指揮:飯守泰次郎
武満徹:「地平線のドーリア」
(編成)ヴァイオリン8名、ヴィオラ2名、チェロ2名、コントラバス5

日本を代表する大作曲家、武満徹氏が1966年に作曲した曲です。
非常に珍しい配置をする曲で、

弦楽器の中でも
第一群:ヴァイオリン2名、ヴィオラ2名、チェロ2名、コントラバス2
第二群:ヴァイオリン6名、コントラバス3
という分かれ方をしており、
各弦楽器奏者は、11パートをバラバラに演奏する箇所があり、神経が張り詰める難曲でした。

舞台前面の弦楽器群は倍音系の音を担当、後面は地平線をイメージし「エコー」の役割を担っています。
東洋的な音楽→西洋的な音楽への移行の不思議な効果を効果的に出すために、作曲家が指定した分かれ方に即した「配置」であり、指揮者の判断も合わさって、音響的にも計算し尽くされた配置になっています

 

 

【珍しい配置】(2)

2007525日 第193回定期演奏会 指揮:尾高忠明
パヌフニク:祭典交響曲 <関西初演>
(編成)14 12 10 8 7-3 2 2 26 4 3 1Tim3
※コーラングレ1、バスクラリネット1、コントラファゴット1

指揮者尾高忠明氏の父、尚忠氏の友人だったポーランドの作曲家、パヌフニク(19141991)の、1963年に作られた3番目の交響曲です。
ポーランドの賛歌、祈りの音楽として歌われてきた「ボグロジカ」を旋律に込め、4本のトランペットが宗教的色彩をもつファンファーレを吹いているシーンです

 

 

【珍しい配置】(3)

200894日 第205回定期演奏会 指揮:藤岡幸夫 
ヴォーン=ウイリアムズ:トマス・タリスの主題による幻想曲
(※2011年3月27日第227回定期演奏会でも演奏)
(編成) ※弦楽器のみです。

舞台前部 / 第1弦楽器群12 10 8 6 6
舞台後部 / 第2弦楽器群 2 2 2 2 1
(※弦楽四重奏は、第1弦楽器群のソロパート。)

この曲は、本来木管楽器が座る席に、第2弦楽器群が座っています。作曲者は、スペースがあれば弦楽器群同士は極力離して配置せよ、と指示しています。
作曲者は弦楽合奏のこのような空間配置を採り、教会内部のオルガンに似た響きの印象を作り出す事に成功しています

 

 

【珍しい配置】(4)            
            (C)HIKAWA

20181117日 いずみホールシリーズ vol.45
指揮:オーギュスタン・デュメイ  ピアノ独奏:ヴァネッサ・ワーグナー
プーランク:オーバード(朝の歌)
(編成) ※ヴァイオリンなし
ヴィオラ2名、チェロ2名、コントラバス2名ー2 2 2 2-2 1 0 0-im+0 独奏Pf  ※コーラングレ持ち替え1

1929年、プライベートパーティのためにバレエ音楽として作曲された、一風変わった小編成のピアノ協奏曲です。
これは作曲者指示の配置です。左右非対称で非常に変則的なものです。
ピアノは舞台の右側前方に、オーケストラはピアニストの後方から左側にかけて扇形を作るように3列で着席しピアノを取り囲み、
指揮者はピアニストの左前方(客席から見ればピアノの奥)に位置しオーケストラと向き合う配置です

 

 

【珍しい配置】<番外編>

201192日 第232回定期演奏会
指揮/ヴァイオリン独奏:オーギュスタン・デュメイ
ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61
(編成)12 10 8 7 5-1 2 2 22 2 0 0Tim0

12型の編成です本来は普通の編成で、作曲者の指示にないですが、
音楽監督デュメイの試行錯誤と指示により、なんと第2ヴァイオリンとヴィオラの前に、ホルンと木管楽器群が入るという、かなり大胆な配置です。
新鮮な演奏会となりました

 

こういった「配置」の妙によって、オーケストラは“音を鳴らす”だけではなく、立体的に“空間”そのものも音響効果として利用し、多人数による“楽器”として機能します。
美しい旋律、繊細なバランスと迫力を併せ持つオーケストラの演奏は、人々を魅了するものがあります
コンサートに行く時は、オーケストラの配置についても意識して見てみると、新しい楽しみ方もできます

会場では【配置】についても、是非注目してみてください

つづきは、いずれまた…

 

それでは、次の”5”が付く日まで